98年3月分成人科教案
教会学校成人科98年3月号
内容目次
「ゲッセマネの祈り」マルコ伝14・32-42 01/Mar./98
九十七年度成人科分級教案「イエス・キリストと使徒たちの信仰」禁無断複製
「ユダヤ人の議会の中で」マルコ伝14・55-65 08/Mar./98
九十七年度成人科分級教案「イエス・キリストと使徒たちの信仰」禁無断複製
「その人のことは知らない」マルコ伝14・66-72 15/Mar./98
九十七年度成人科分級教案「イエス・キリストと使徒たちの信仰」禁無断複製
「ピラトの前で」マルコ伝15・01-15 22/Mar./98
九十七年度成人科分級教案「イエス・キリストと使徒たちの信仰」禁無断複製
「ゴルゴダの丘で十字架に」マルコ伝15・16-32 29/Mar./98
九十七年度成人科分級教案「イエス・キリストと使徒たちの信仰」禁無断複製
大詰めです。
今月のねらい
私たちは、しばしば信仰を揺るがされるほどの大きな事態にぶち当たります。一昔前の大学キャンパスでは「アジテーター」というものがありました。「アジ」とはラテン語で「揺るがすこと」。彼らはそれを自らの知恵でなそうとしました。しかし、私たちを揺るがすことが出来るのは、ただ主の十字架だけです。では、主の十字架は、いかに私たちの信仰を揺るがすのでしょうか。今月はいくつかの聖書解釈の学説を見ていきながらそのことを考えましょう。
「ゲッセマネの祈り」マルコ伝14・32-42 01/Mar./98
九十七年度成人科分級教案「イエス・キリストと使徒たちの信仰」禁無断複製
MAR14:32一同がゲツセマネという所に来ると、イエスは弟子たちに、「わたしが祈っている間、ここに座っていなさい」と言われた。
ゲッセマネ、あえて訳せば「油絞り」。
イエス様は、なぜ「一緒に祈る」のではなく、「座っている」ことをお命じになったのでしょうか。
MAR14:33そして、ペトロ、ヤコブ、ヨハネを伴われたが、イエスはひどく恐れてもだえ始め、
なぜ三人の弟子だけを伴ったのでしょうか。
イエス様はなぜ恐れてもだえ始めたのでしょうか。なぜイエス様が恐れおののいたのでしょうか。イエス様は勇気のあるお方ではないのでしょうか。
MAR14:34彼らに言われた。「わたしは死ぬばかりに悲しい。ここを離れず、目を覚ましていなさい。」
「悲しい」とはなんなのでしょうか、また、そのことと「目を覚ましていなさい」とはどのような関係があるのでしょうか。
MAR14:35少し進んで行って地面にひれ伏し、できることなら、この苦しみの時が自分から過ぎ去るようにと祈り、
MAR14:36こう言われた。「アッバ、父よ、あなたは何でもおできになります。この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしが願うことではなく、御心に適うことが行われますように。」
この祈りをもう一度見てみましょう。
「杯を取りのけてください」とは
・すでに最後の晩餐の時に「もう神の国に入るまで葡萄酒は飲まない」と言ったのにまた杯が差し出されたので遠慮している。
・「苦しみの杯」とは十字架の上で差し出される酸い葡萄酒のことである。
・その他
「しかし、御心のままに」とは
・一応自分勝手なお祈りではないということを示している。
・その他
MAR14:37それから、戻って御覧になると、弟子たちは眠っていたので、ペトロに言われた。「シモン、眠っているのか。わずか一時も目を覚ましていられなかったのか。
MAR14:38誘惑に陥らぬよう、目を覚まして祈っていなさい。心は燃えても、肉体は弱い。」
ここで初めてイエス様は「祈っていなさい」という教えを明確にします。なぜそれはここで初めて明確になったのでしょうか。
また、「心は燃えても、肉体は弱い」とはなにを意味しているのでしょうか。
MAR14:39更に、向こうへ行って、同じ言葉で祈られた。
マルコが「同じ言葉で祈られた」ことを強調している理由はなんでしょうか。
MAR14:40再び戻って御覧になると、弟子たちは眠っていた。ひどく眠かったのである。彼らは、イエスにどう言えばよいのか、分からなかった。
弟子たちは何故眠かったのでしょうか。
MAR14:41イエスは三度目に戻って来て言われた。「あなたがたはまだ眠っている。休んでいる。もうこれでいい。時が来た。人の子は罪人たちの手に引き渡される。
(私訳)「もう、眠るのには十分である。時が来た。見よ、…」。
MAR14:42立て、行こう。見よ、わたしを裏切る者が来た。」
「見よ」という言葉が二回出てきます。
「ユダヤ人の議会の中で」マルコ伝14・55-65 08/Mar./98
九十七年度成人科分級教案「イエス・キリストと使徒たちの信仰」禁無断複製
MAR14:55祭司長たちと最高法院の全員は、死刑にするためイエスにとって不利な証言を求めたが、得られなかった。
MAR14:56多くの者がイエスに不利な偽証をしたが、その証言は食い違っていたからである。
当時の裁判の方法はどのようなものだったのでしょうか。
DEU17:06死刑に処せられるには、二人ないし三人の証言を必要とする。一人の証人の証言で死刑に処せられてはならない。
ということは、二人ないし三人の証言が食い違っていたということです。これを強調(マタイやルカに比べて明らかにマルコは強調しています)している理由はなんでしょうか。
MAR14:57すると、数人の者が立ち上がって、イエスに不利な偽証をした。
MAR14:58「この男が、『わたしは人間の手で造ったこの神殿を打ち倒し、三日あれば、手で造らない別の神殿を建ててみせる』と言うのを、わたしたちは聞きました。」
JER26:08エレミヤが、民のすべての者に語るように主に命じられたことを語り終えると、祭司と預言者たちと民のすべては、彼を捕らえて言った。「あなたは死刑に処せられねばならない。
JER26:09なぜ、あなたは主の名によって預言し、『この神殿はシロのようになり、この都は荒れ果てて、住む者もなくなる』と言ったのか」と。すべての民は主の神殿でエレミヤのまわりに集まった。
MAR14:59しかし、この場合も、彼らの証言は食い違った。
バベルの塔の時にも人間の思惑は食い違ったことを思い出します。
MAR14:60そこで、大祭司は立ち上がり、真ん中に進み出て、イエスに尋ねた。「何も答えないのか、この者たちがお前に不利な証言をしているが、どうなのか。」
MAR14:61しかし、イエスは黙り続け何もお答えにならなかった。そこで、重ねて大祭司は尋ね、「お前はほむべき方の子、メシアなのか」と言った。
MAR14:62イエスは言われた。「そうです。あなたたちは、人の子が全能の神の右に座り、/天の雲に囲まれて来るのを見る。」
DAN07:13夜の幻をなお見ていると、/見よ、「人の子」のような者が天の雲に乗り/「日の老いたる者」の前に来て、そのもとに進み
イエス様はこの時に初めてご自分がメシアであることを公に認めました。そのときまで、人々がそう期待していたにもかかわらずお認めにならなかったことを。この場に及んで認めたのはなぜでしょうか。
MAR14:63大祭司は、衣を引き裂きながら言った。「これでもまだ証人が必要だろうか。
衣を引き裂くのは旧約聖書によく出てくる激しい感情を示す仕草です。
MAR14:64諸君は冒涜の言葉を聞いた。どう考えるか。」一同は、死刑にすべきだと決議した。
MAR14:65それから、ある者はイエスに唾を吐きかけ、目隠しをしてこぶしで殴りつけ、「言い当ててみろ」と言い始めた。また、下役たちは、イエスを平手で打った。
「その人のことは知らない」マルコ伝14・66-72 15/Mar./98
九十七年度成人科分級教案「イエス・キリストと使徒たちの信仰」禁無断複製
MAR14:66ペトロが下の中庭にいたとき、大祭司に仕える女中の一人が来て、
なぜペテロは来なくてもいい中庭にいたのでしょうか。
MAR14:51一人の若者が、素肌に亜麻布をまとってイエスについて来ていた。人々が捕らえようとすると、
MAR14:52亜麻布を捨てて裸で逃げてしまった。
・様子を見に来た
・実は自分もイエスの仲間であるということを言い表す機会をうかがっていた
MAR14:67ペトロが火にあたっているのを目にすると、じっと見つめて言った。「あなたも、あのナザレのイエスと一緒にいた。」
MAR14:67 και ιδουσα τον πετρον θερμαινομενον εμβλεψασα αυτω λεγει και συ μετα του ναζαρηνου ιησου ησθα
MAR03:14そこで、十二人を任命し、使徒と名付けられた。彼らを自分のそばに置くため、また、派遣して宣教させ、
MAR03:14 και εποιησεν δωδεκα ινα ωσιν μετ αυτου και ινα αποστελλη αυτουs κηρυσσειν
MAR14:68しかし、ペトロは打ち消して、「あなたが何のことを言っているのか、わたしには分からないし、見当もつかない」と言った。そして、出口の方へ出て行くと、鶏が鳴いた。
MAR14:69女中はペトロを見て、周りの人々に、「この人は、あの人たちの仲間です」とまた言いだした。
MAR14:70ペトロは、再び打ち消した。しばらくして、今度は、居合わせた人々がペトロに言った。「確かに、お前はあの連中の仲間だ。ガリラヤの者だから。」
MAR14:71すると、ペトロは呪いの言葉さえ口にしながら、「あなたがたの言っているそんな人は知らない」と誓い始めた。
MAR14:72するとすぐ、鶏が再び鳴いた。ペトロは、「鶏が二度鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」とイエスが言われた言葉を思い出して、いきなり泣きだした。
MAT26:74そのとき、ペトロは呪いの言葉さえ口にしながら、「そんな人は知らない」と誓い始めた。するとすぐ、鶏が鳴いた。
LUK22:60だが、ペトロは、「あなたの言うことは分からない」と言った。まだこう言い終わらないうちに、突然鶏が鳴いた。
まとめてみましょう。マルコの場合には
打ち消し=>鶏=>打ち消し=>鶏=>号泣
マタイ・ルカの場合には
打ち消し=>鶏=>号泣
マルコでは、鶏が鳴き続けるにも関わらず否定を続けるペテロの姿を描き、マタイ・ルカでは鶏が鳴くのを聞いて自分がイエスを裏切ってしまっていたことに気がつくペテロの姿を描きます。
ペテロの涙の意味を想像してみましょう。また、裏切りのユダの「後悔」との違いについて考えてみましょう。
MAT27:03そのころ、イエスを裏切ったユダは、イエスに有罪の判決が下ったのを知って後悔(μεταμεληθειs≠MAR01:15μετανοειτε)し、銀貨三十枚を祭司長たちや長老たちに返そうとして、
MAT27:04「わたしは罪のない人の血を売り渡し、罪を犯しました」と言った。しかし彼らは、「我々の知ったことではない。お前の問題だ」と言った。
MAT27:05そこで、ユダは銀貨を神殿に投げ込んで立ち去り、首をつって死んだ。
・ペテロは( )なのが悔しくて泣いた。
・ペテロは( )なのが悲しくて泣いた。
・ペテロは( )なのがうれしくて泣いた。
・その他
「ピラトの前で」マルコ伝15・01-15 22/Mar./98
九十七年度成人科分級教案「イエス・キリストと使徒たちの信仰」禁無断複製
MAR15:01夜が明けるとすぐ、祭司長たちは、長老や律法学者たちと共に、つまり最高法院全体で相談した後、イエスを縛って引いて行き、ピラトに渡した。
なぜ作業は早朝に行われたのでしょうか。
・ピラトの花の金曜日を妨げないため
・事務を迅速に行うため
・安息日に影響を及ぼさないため
MAR15:02ピラトがイエスに、「お前がユダヤ人の王なのか」と尋問すると、イエスは、「それは、あなたが言っていることです」と答えられた。
「それは、あなたがいっていることです」というのはユダヤ的な返答で、一応「その通りです」の意味ですが、
MAR14:62イエスは言われた。「そうです(わたしがそうである:εγω ειμι)。あなたたちは、人の子が全能の神の右に座り、…」(かっこ内私訳)
と比べて、はっきり答えていないところが特色です。もし、この時にピラトが「イスラエルの王なのか」と聞いていたらどう答えていたでしょうか。
MAR15:03そこで祭司長たちが、いろいろとイエスを訴えた。
MAR15:04ピラトが再び尋問した。「何も答えないのか。彼らがあのようにお前を訴えているのに。」
MAR15:05しかし、イエスがもはや何もお答えにならなかったので、ピラトは不思議に思った。
本来はここでピラトとの問答を入れるべきでしょう。おそらくマルコは2節の答えを強調したかったのでしょう。
MAR15:06ところで、祭りの度ごとに、ピラトは人々が願い出る囚人を一人釈放していた。
MAR15:07さて、暴動のとき人殺しをして投獄されていた暴徒たちの中に、バラバという男がいた。
バラバの存在はおそらく史実だろうと考えられています。政治犯です。
MAR15:08群衆が押しかけて来て、いつものようにしてほしいと要求し始めた。
MAR15:09そこで、ピラトは、「あのユダヤ人の王を釈放してほしいのか」と言った。
MAR15:10祭司長たちがイエスを引き渡したのは、ねたみのためだと分かっていたからである。
なぜイエス様が十字架につけられたか。ある人は、「国家に対する反逆」であるか、「神を冒涜した」か「神から見捨てられた」か、と3つの可能性を挙げたあとで、この「ねたみ」のことを問題にします。
「ねたみ」というのはなんなのでしょうか。
MAR15:11祭司長たちは、バラバの方を釈放してもらうように群衆を扇動した。
MAR15:12そこで、ピラトは改めて、「それでは、ユダヤ人の王とお前たちが言っているあの者は、どうしてほしいのか」と言った。
MAR15:13群衆はまた叫んだ。「十字架につけろ。」
MAR15:14ピラトは言った。「いったいどんな悪事を働いたというのか。」群衆はますます激しく、「十字架につけろ」と叫び立てた。
MAR15:15ピラトは群衆を満足させようと思って、バラバを釈放した。そして、イエスを鞭打ってから、十字架につけるために引き渡した。
ピラトが群衆を「満足させようと」思ってという一文は重要です。ピラトは、本心ではどう思っていたのでしょうか。
「ゴルゴダの丘で十字架に」マルコ伝15・16-32 29/Mar./98
九十七年度成人科分級教案「イエス・キリストと使徒たちの信仰」禁無断複製
MAR15:16兵士たちは、官邸、すなわち総督官邸の中に、イエスを引いて行き、部隊の全員を呼び集めた。
なぜ「全員」なのでしょうか。
MAR15:17そして、イエスに紫の服を着せ、茨の冠を編んでかぶらせ、
紫の服は
・王の服を模してのことであり、紫は高貴な色であった
・典礼色で受難節がが紫であるように、嘆きの色である
茨の冠は
・栄光に対する皮肉
・その他
MAR15:18「ユダヤ人の王、万歳」と言って敬礼し始めた。
MAR15:19また何度も、葦の棒で頭をたたき、唾を吐きかけ、ひざまずいて拝んだりした。
MAR15:20このようにイエスを侮辱したあげく、紫の服を脱がせて元の服を着せた。そして、十字架につけるために外へ引き出した。
明らかに兵隊は有罪者に対する愚弄を行っています。
ISA53:03彼は軽蔑され、人々に見捨てられ/多くの痛みを負い、病を知っている。彼はわたしたちに顔を隠し/わたしたちは彼を軽蔑し、無視していた。
MAR15:21そこへ、アレクサンドロとルフォスとの父でシモンというキレネ人が、田舎から出て来て通りかかったので、兵士たちはイエスの十字架を無理に担がせた。
シモンについてはその詳細がわかっていませんが、一つの節としてマルコが知る教会員であったという可能性もあります。
MAR08:34それから、群衆を弟子たちと共に呼び寄せて言われた。「わたしの後に従いたい者は、自分を捨て、自分の十字架を背負って、わたしに従いなさい。
この聖句との関連で、「無理に」十字架を担がせた理由について考えてみましょう。
MAR15:22そして、イエスをゴルゴタという所――その意味は「されこうべの場所」――に連れて行った。
MAR15:23没薬を混ぜたぶどう酒を飲ませようとしたが、イエスはお受けにならなかった。
これにより痛みを麻痺させることが出来たともいわれています。あえてそれを受けなかった理由はそれではなんでしょうか。
MAR15:24それから、兵士たちはイエスを十字架につけて、/その服を分け合った、/だれが何を取るかをくじ引きで決めてから。
詩編22編ですが、当時ローマの慣習にはこのようなものはなかったともいわれます。
MAR15:25イエスを十字架につけたのは、午前九時であった。
MAR15:26罪状書きには、「ユダヤ人の王」と書いてあった。
罪状書きがそのように記されていることに注目することは先週見たとおりです。
MAR15:27また、イエスと一緒に二人の強盗を、一人は右にもう一人は左に、十字架につけた。
MAR15:28*こうして、「その人は犯罪人の一人に数えられた」という聖書の言葉が実現した。
ISA53:12それゆえ、わたしは多くの人を彼の取り分とし/彼は戦利品としておびただしい人を受ける。彼が自らをなげうち、死んで/罪人のひとりに数えられたからだ。多くの人の過ちを担い/背いた者のために執り成しをしたのは/この人であった。
MAR15:29そこを通りかかった人々は、頭を振りながらイエスをののしって言った。「おやおや、神殿を打ち倒し、三日で建てる者、
この発言はマルコ伝における宮清めの記事の中では確認することが出来ません。
MAR15:30十字架から降りて自分を救ってみろ。」
これに対してその力をイエス様がふるわない理由については
ISA45:15まことにあなたは御自分を隠される神/イスラエルの神よ、あなたは救いを与えられる」と。
1KI19:12地震の後に火が起こった。しかし、火の中にも主はおられなかった。火の後に、静かにささやく声が聞こえた。
で考えればいいでしょう。
MAR15:31同じように、祭司長たちも律法学者たちと一緒になって、代わる代わるイエスを侮辱して言った。「他人は救ったのに、自分は救えない。
MAR15:32メシア、イスラエルの王、今すぐ十字架から降りるがいい。それを見たら、信じてやろう。」一緒に十字架につけられた者たちも、イエスをののしった。
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